街の小さな本屋さん。ナツメ書店



福岡県北九州市小倉魚町サンロード商店街にある築50年以上の古いビルを改装してできた「メルカート三番街」。ビル内約6坪のスペースに本屋「ナツメ書店」はあります。
 
メルカート三番街
 
店内には、店主である倉内由美子さんが選んだ好きな書籍をはじめ、流通の少ないリトルプレスやZINEも多数並んでいます。

リノベーションまちづくりや事業の情報を収集し発信する「リノベーションまちづくりセンター」のオフィスという側面も持ち合わせており、街の人が参加する月一度の読書会も開催されています。

ネットで気軽に本が購入できる時代において、街の本屋さんを開くことにどのような思いがあったのか。

そんなお店を開くいきさつや思いを中心に、倉内さんにお話をお聞きしました。

本とリノベーション

 
− 小倉で本屋さんを開いたきっかけは何だったのですか?

倉内 : もともとリノベーションまちづくりセンターという会社のスタッフとして働いていたのですが、 2014年7月に「会社のオフィス兼、本のある空間を作りませんか」という提案を受けて、それがきっかけですね。

− 北九州で開催されている「リノベーションスクール」に参加されてたのですか?

倉内 : いえ、この会社に就職するまでリノベーションスクールのことは知らなくて。リノベーションスクールは、遊休不動産を活用したリノベーションまちづくりを学ぶ超実践型のスクールです。まちの中の使われていない建物をどう活用すれば、その建物と建物があるエリアの価値を上げることができるのかを、4日間かけて考え、最終日にはその建物のオーナーさんに直接プレゼンテーションし、その後はそれをまちづくり会社が実現していくという取り組みをやっています。

− なぜこの会社に入られたのですか?

倉内 : ここに来る以前は福岡の箱崎というところに住んでいたのですが、そこにある地元の不動産屋さんが、自分でDIYして使っていいよという条件で古い物件の貸し出しをしていて、知り合いの方がそういう物件に自分で手を入れられてアトリエやお家として住んでいらっしゃったんですね。リノベーションをしながら建物を使うとか、住むとか、そういうことを目の当たりにして、すごくいいなあと思って。リノベーション自体には興味がありました。それで求人をみたときにリノベーションという文字にピンときて興味を惹かれて、それで応募した感じです。

小さいからこそ思わぬ本との出会い

本棚小説やデザイン系の書籍をはじめ、リトルプレスやZINE、造本作家の方が手がけた本など、ここでしか読めない本が多数並ぶ。

 
− 他の本屋さんにはない魅力ってどういうところにあると思いますか。

倉内 : ひとつは、小さいので、あんまりエネルギーを使わずにひととおり店内を見ることができるというのがあると思います。私は小説が好きで、大きい本屋さんだと文庫のコーナーを見て、時間がなかったらそこだけ見て帰るということもあるのですが、ここは狭いので、普段自分が絶対行かないようなコーナーの本を手に取る機会や、思わぬ出会いが生まれる可能性があるかなと思っています。
それからあとは、小さな出版社の本や、個人の方が出されているリトルプレスやzineと呼ばれる少部数の印刷物を積極的に扱っています。一般の流通にのっていないので、普通の本屋さんではなかなか店頭に置かれないような本を取り扱っているのも、そこはひとつ特徴かなと思います。九州ではうちしか取り扱いがない本もあります。

− こういう形にしたのは、そういう特徴を意識したからですか?

倉内 : 小さいスペースですので、品揃えのコンセプトをしっかり決めなきゃと思って自分なりに考えたのですが、全然答えがでなくて、とりあえず好きな本を仕入れようとひらきなおってやっています。自分の好きな本じゃないとお客さんにも勧められないし、勧めたい本を置いてます。

− じゃあ、ここにあるのは全部好きな本なんですね

倉内 : あとは、全集などはまちの方から寄贈していただいたものも多いです。

− 全集も全部読まれたのかと思ってびっくりしました。(笑)

倉内 : いえ、それは、読めていないですね(笑)

好きな本による読書会

古書や全集寄贈された古書や全集。

 
− ここに来るお客さんはどのように過ごされるんですか?

倉内 : 本を座って読んでいって下さる方もいますね。お喋りして帰る方もいますし。丁寧に本を見ていって下さる方もいます。

− ずっと本を読んでいらっしゃる方もいるんですか?

倉内 : はい。小説を一冊読んで帰る女の子とか。

− 普通の書籍の他に、アーティストさんが作ったような珍しい本もありますけどどのように知ったのですか?

倉内 : ひとつは福岡時代にブックスキューブリックという本屋さんで働いていて、そこはちょっと個性的な品揃えというか、よくこだわりの本屋さんと言われるような本屋さんだったのですが、そこで出会ったものがあります。あとは元々本が好きで、本屋さんも好きなので、その場所場所で出会ったものや、インターネットのショップで商品をみてこんな作品があるんだなあと知ったり。

− 新しく知っていった本と、昔から好きだった本も置いているのですか?

倉内 : 小学生のときに読んでいた本などもそのままあったりしますね。

− そこの本棚にある『モモ』、私も好きです。

倉内 : 一番繰り返し読んだ本かもしれません。先月は『モモ』を課題図書にして読書会をしました。

気軽に寄れる街の本屋さんへ

店内ドアノブを活用したレジ台や、手作りの本棚などDIYされた什器たち。店内入る際には、スリッパに履き替えることも忘れずに。

− 読書会があるんですね

倉内 : 月に一度あります。

− どういう方が参加されるんですか。

倉内 : 読書会は、「KITAQ読書会」という北九州の読書会があって、そこを主催されている方がファシリテーターとして来てくださっています。あとはFacebookでお知らせをして、申し込みしてくださった方です。初めて読書会に来ますという方が多いですね。

− なぜ、その読書会をしようと思ったんですか。

倉内 : そのファシリテーターをお願いしている方が、一度ナツメ書店を会場にして読書会をして下さったんですね。読書会は、いつかはできたらいいなと思っていたのですが、私は読書会の経験がほとんどなかったので、実現するのは先になるだろうなと思っていました。そしたら「僕がファシリテーターをしますので、主催してやったらいいじゃないですか」とその方が言って下さって。

− ナツメ書店のこれからについて教えて下さい。

倉内 : 本のある場所ではあるので、本をキーワードにして話せると楽しいですね。本が好きな人にも好きじゃない人にも、通ってもらえるような本屋になれたらそれはすごく嬉しいですね。あとは、別に本を読まなくても、ちょっと立ち寄ろうかなって思い浮かべてもらえるような、近所にあって良かったなあと思ってもらえるような場所になればいいなと思います。
本が好きで今まで助けられたことも多いし、本を読んでいるとやっぱり楽しいので。皆が皆、本を読むべきとか、本を読んで楽しいと思うべきとか、そういうことは全然思っていませんが、本当は楽しめる可能性があるけどまだ出会ってない人がいたときに、ここでの本との出会いがきっかけになって、読書への扉が開いたりしたら、すごく嬉しいことだなあと思います。
おすすめの本ありますかって聞いて頂けることも多いのですが、私がまだ知識が足りなくて、なかなかその人にぴったりの本って勧められないんですよ。そしてお話しながら、自分のできる範囲でおすすめするんですけど、すごく怖いというか、大丈夫かな、というのも込めて「また感想を教えて下さい」と言っています。(笑)ブックコンシェルジュという言葉があって、その人に合う本を薦めたりストーリーのある読書案内をしたりできる方が世の中にはいらっしゃいます。勉強して、少しでもそういうことが出来るようになると理想的ですね。

− 読書会も、これからも続けていきますか。

倉内 : そうですね。月に一回、続けていけたらいいなと思っています。

− 最後にメッセージを。

倉内 : 小倉の街を歩いていて、時間があればふらっと立ち寄って頂ければ嬉しいです。

(聞き手・文/今道安里紗 写真/小田雄大)
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倉内 由美子
1984年宮崎県生まれ。
一般社団法人リノベーションまちづくりセンターのスタッフとして勤務する傍ら、同センター運営のナツメ書店を担当する。
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ナツメ書店
住所 福岡県北九州市小倉北区魚町3丁目3-12 中屋ビル1F−4
平 日:09:00-20:00
土日祝:11:00-18:00
不定休
http://natumeshoten.tumblr.com/
TRIP OFF編集部
TRIP OFF編集部
Writer

TRIP OFFとは、自ら訪れた福岡の人・もの・場所の魅力を物語と共に観光情報を発信しています。

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